何をトチ狂ったのか釣り大会なるものに出場することになった。
”釣り大会”と聞くと、各地の予選を勝ち抜いた猛者たちが火花を散らしてしのぎを削る殺伐とした雰囲気をイメージしていたが、釣りに命と給料を刻みまくっている友人の話では「フツーの大会はお気楽なもんだよ!上手い人の釣りが見れるし、記念品とかももらえるよぉ」ということらしい。
この友人もオッサンもシロギス釣りの腕はローレベルのドッコイドッコイで、上達もイマイチなもんだから現状を打破できないものかと悶々としていた。
名人達のリアルな釣りを見て”お勉強しましょう”という名目でのシロギス釣り大会の参加となったのでございます。
参加した大会名は「サンスポフィッシング Challeng2016(横羽地区大会)」で参加人数262人とシロギス釣りの大会としては最大の大会らしい。
勝負はシロギス10匹の重量で決まる。
この大会はちょっと前までは5匹での勝負だったと思うんだけど、10匹勝負となると完全に実力勝負となってしまう。
5匹なら何かの間違いと運が重なって大キスが釣れればもしかしたらがあるかもしれないが、残念ながら10匹じゃ運目当てという訳にもいかない。
オッサンクラスがどうあがいても入賞なんてできるわけがないのであるが、ヌケの悪いオッサンはわずかな希望を込めて、自作の誘導仕掛けをぶっつけ本番で試すという愚挙に出たのでした。
どうせダメなんだから何でもやってみる!という心意気は買うが、これでうまくいったためしがない。
分かっちゃいるけど懲りない性格なので、「この自作仕掛けが大爆釣で優勝したらどうしよう♪」と妄想だけがみるみる膨らみ、せっせと自作仕掛けを仕込むのでした。
自作の誘導オモリ式胴付き仕掛けだ
大会当日。
いつもより早めにシロギスの定宿”根岸丸”さんへ到着。
釣り座はクジ引きらしいので、早く来たからと言って良い釣り座をゲットできるわけではないが、気持ちだけが高ぶっていそいそとやってきた。
他の釣り人も同様らしく、まだ6時前だというのに駐車場は車が多い。
早朝だがすでに駐車場には車がスゴイことに
おまけに船宿の入り口には、パチンコ屋の新装開店よろしく場所取りのクーラーボックスまで置いてある。
先例にならって、オッサンもクーラーボックスを並べてみたが・・・
何で場所取りまでしているかというと、根岸丸さんからは2隻出船する。
1号船は「おやじ船」で2号船は「若坊主船(若船長)」といった具合だ。
2号船の若坊主船長は知る人ぞ知る大キスのスペシャリストで、このサンスポ大会で何度も優勝船となっている”優勝を狙える船”なのだ。
必然、てっぺんを狙えるレベルの釣り師は2号船を所望する。
船中の釣り座はクジ引きだが、1号船or2号船は早い者勝ちで選べるのだ。
しか〜し!クーラーボックスの場所取りは反則でほどなく撤去となった。
このルールを知らなかったオッサンも、ちゃっかりクーラーボックスを置かせていただいたというのは内緒だ。
オッサン&友人も【ここは一発2号船でてっぺん取ったる!!】ということは全くなく、「おやじ船なら気楽だし、大型船だからゆったりだし、優勝したこともあるんだし・・・」と早くも現場の雰囲気にチヂミあがり気味で”んじゃぁ、おやじ船でお勉強ということでひとつ・・・”ということになったのでした。
受付が始まり行列となるが、当然2号船からどんどん埋まってゆく。
まぁ、事前に申し込みはしているので乗れないということはない。
オッサンたちも適当に並んでいたが、前方のメンバーが凄腕ばかりで、これだけの名人たちが一堂に介するというのも改めてスゴイ大会なんだな〜と思う。
一方、後方は高齢気味でほのぼのムード。そもそも並んでもいなかったりもする。
当然ながらこの人達は1号船だ。
ちょうど友人の前で2号船が締め切られたが、ぜんぜん問題なし!
釣り座はクジ引きというか座席番号がスクラッチで隠れているカードを選び、スクラッチを削るという宝くじ的でおもしろいシステムだった。
先に選んだ友人は後ろ気味のトモ。
オッサンはなんと!一番先頭のミヨシを引いてしまった。
「お勉強だからどこでもいいや!」と無欲だったのが良かったのかもしれないが、ど〜でもいいところで運を使わなくてもよいではないか!とも思った。
友人は「結果が求められる席だよね」と早くもプレッシャーをかけてきた。
乗船時間になり、各々自分の釣り座で準備を始める。
やはりおやじ船は年配者が多い。
「これから釣り大会ですよ!」というより「老人会の釣りイベントですよ!」という塩梅だ。
顔見知りが多いみたいで殺伐とした雰囲気ではなく、釣り人ならではのシニカルな会話が飛び出し、早くも一杯やっている人もいる。
少々高齢気味だが和気あいあいのムードでの出船準備
オッサンはミヨシなので片方にしかお隣さんがいないのだが、お隣さんは作務衣を着込んだご高齢だ。
聞くところによるとこの御仁は和竿の竿師らしい。
「ここら辺の竿は全部オレが作ったんだよ!」と船のロッドホルダーに立っている竿をグルリと指す。
周りを見ると何本も和竿が立っていて、これだけ和竿が揃っている光景も珍しい。
たいていは船中に数本程度見かける和竿が、今日は7割くらいは和竿だ。
たま〜に和竿を手にしている生意気なヤングもいるのだが、やはり和竿は人生に年季が入っていないと似合わない。
しかし侮るなかれ!和竿釣り師は釣りのレベルも高い!!
いよいよ出船の時間だ。
まずは他の参加船との場所である沖之瀬へ向かう。
今日は風もなく凪で最高の釣り日和だが、時間的に余裕があるのかおやじ船は飛ばすこともなくのんびりと船を走らせる。
今日は無風の凪で釣り日和♪
船が動き出すと緊張するのか釣りの作戦を立てているのか会話もなくなる
船酔いはしたことないが念のために酔い止め代わりの”ミンティア”
後方から他の船宿の参加船がブチ抜いていくが、おやじは慌てることもない。
まぁ、あんまり揺らすと釣り人に何かあるとねぇ〜、歳が歳だけにね。
参加船が集合している船団が見えてくる。
12隻の釣り船が一か所に密集している光景も圧巻だ。
これだけの釣り船が密集しているのも釣り大会ならでは
全ての参加船が到着すると、いきなり各船が全力で散ってゆく。
どうやら始まったらしいが「ヨ〜イドン!」とか始まりの合図はなく、突然のスタートとなった。
おやじ船もエンジンをぶん回して移動するが、中には集合場所でいきなり釣り始める船もあったりして船長の作戦もそれぞれだ。
5分ほど移動して最初のポイントに到着したようだ。
開始から一時間はこの大会を協賛しているマルキュー製の「パワーイソメソフトタイプ」を使用するのが掟だ。
大型狙いの大会ではあるが、パワーイソメを使う一時間は船中で最多尾数釣りあげるとマルキュー賞なるものがあるので大きさ問わずにシロギスを釣りあげれば賞に近づく。
乗船時にエサは配られるがやはり活きたエサを使いたい
オッサンには緑と赤の2色が配給されたが、オッサンは疑似餌を使ったことがない。
はて?どうしたものかととりあえず赤イソメをたらし2cmで付けてみた。喰わせ重視の作戦だ。
ちなみに仕掛けは自作の誘導胴付き仕掛けで、オモリは新色の青にキラキラのラメ付だ。
なんで青なのかというと、ある本に緑色と青色は集魚効果があると書いてあったというだけだ。
いままで何色か試してみたが、とくに釣れる色というのはなく釣り人の気分的なもんだと思っています。
喰わせ重視でひとつ。夏を意識して青のオモリで決めてみた。ちなみにオモリに貼ってある丸いシールは高輝度の蓄光シール
船長の合図でいよいよ開始!
ミヨシなので思いっきりぶん投げることができる。
青空に仕掛けとイソメが踊りながら飛んでいく。
一投目は何の反応もないので回収すると、頼みの綱の誘導仕掛けが絡みまくっていた。
この絡み方から判断すると「この仕掛けはダメだ!」とわずか一投で誘導仕掛け作戦は終了。
という訳で、今まで使っていたフツーの胴付き仕掛けにチェンジするが、この場合は入賞の望みは1000%あり得なくなるということだ。
まぁ、しょーもない仕掛けに夢をのせてみたが現実はこんなもんだ。
気を取り直して・・・
次はイソメを一本掛けにしてみた。
次も生体反応なし!
やはり所詮は作り物のエサか・・・
でも「これで一時間も粘らなきゃいけないんだよなぁ〜」と気分が重たくなっていると、お隣りの竿師が良型を釣りあげる。
ムムム・・・釣れるんじゃん!
竿師の餌を見ると緑と赤を一本ずつ房掛けにしている。
オッサン:「2色を房掛けにしたほうがいいですか?」
竿師:「色は何とも言えないけれど、房掛けにしたほうが来るね!」
なるほど!いつも活き餌のアオイソメを使うときは房掛けにすることが多いから、それと同じにすればいいんじゃん!
っというわけで、喰い込みを重視して一本を半分にカットし、赤と緑2色の房掛けにしてみた。
すると15cmくらいのシロギスが掛かった。
今日の初モノが釣れてホッと一安心。
竿師にお礼を言って、この作戦で釣り続けることにする。
ライブバイトは活きたイソメとは違って、逃げたり噛みついたりしないのでエサ付けは楽ちんだ。
これで釣れればいいのだけれど・・・
アカクラゲの触手が付いてくることも多いが、アタリはちょくちょく来て10数cm〜20cmくらいまでが上がってくる。
もうちょっとサイズアップして欲しいが、この一時間はサイズよりも数狙いだ。
しかし、ハリ掛かりしないことも多いなぁ〜
面白いのは赤色だけエサを持っていかれることが多く、掛け損ねて回収すると緑色のエサだけ付いてくる。
どうやら今日のアタリ色は赤色らしい。
結局、一時間のライブバイトタイムは8匹で終了。
船中の最多尾数は15匹だった。すご〜!
これからがいよいよ本番。活きたイソメの出番だ!
イソメを半分に切って、まずはシッポのほうを刺し通し、次に頭を切らずに頭の固いところをチョン掛けにする二本刺しにする。
これから爆釣じゃ〜っと思いっきりぶん投げるがここからしばらく沈黙の時間帯となる・・・
どういう訳か活きエサにした途端アタリがプッツリ来なくなったのだ。
あれ〜?何でだろ〜?
周りはしっかりと釣れているがオッサンには来ない。
コン!と来る小さな振動はアカクラゲばかりで、触手を除去する時間に追われてしまっている。
ほどなく原因が判明する。
オッサンはいつものように9時〜12時までの大きく聞き合せを入れ、動かさないで喰わせる時間を15秒ほど取っていた。
”大きく誘ってしっかり食わせる”大キス狙いの作戦だったのだが、これがイマイチはまっていなかったらしい。
竿師は基本的に船下狙いだったけれど、ゆっくり小さく誘ったり、ス〜っと持ち上げて聞きあげたりで静かな釣りをしていて、型は大きくないが数は伸ばしている。
なるほど!オッサンはいつもの自分の釣りをしていて今日のテーマである【お勉強】をすっかり忘れていた。
クラゲ対策で遠投をやめてチョイ投げに切り替える。
誘いは
を組み合わせて、その時々で良いと思われる誘いをやってみる。
オモリが浮いたときはそ〜っと静かに着底させ、常に静かに動かすことを心掛けた。
するとポツポツと釣れ始めた。
実は今日のメインテーマは、オッサンのシロギス釣りの課題である”喰わせている時のアタリからどうハリ掛かりさせるか”を他の釣り師から学ぼうと思っていた。
お隣は竿師しかいないので、師の釣り方をよく観察すると【アタリ→すぐに竿をス〜っとあげて聞き合せる】とやっていた。
オッサンも真似してやってみたが、なかなかハリ掛かりしない。
う〜ん、やはり竿師自身が自分のために作った和竿と、オッサンの安いカーボンロッドでは釣り方を真似しても結果は違うのかもしれない。
そこで【アタリ→ラインを送る→5秒後にゆ〜っくりズル引き→アタリ→ラインを送る・・・繰り返して、大きなアタリが来たらあわせる】と良い確率でハリ掛かりした。
しかもこの場合は良型のシロギスがあがることが多かった。
このやり方は勝負の時間が長くてちょっともどかしいけれど、一つの方法として引き出しにしまっておこう。
しか〜し!良型とは言ってもせいぜい22cmくらいしかあがってこない。
今のところキープしている10匹は18cm〜22cmといったところだ。
入賞なんて期待していないが、一応大会なんだからもうちょっとサイズアップが欲しいところだが大型の反応がない。
釣りにはタラレバがつきもので、オッサンも今日は一度だけ今までにない強いアタリが来た。
ハリ掛かりさせると明らかにシロギスの引き方だ。
「これはキタ〜!!」っとリールを慎重に巻いていると突然軽くなる。
「やっちまった〜すっぽ抜けた・・・」回収したハリを見つめながらジムキャリーのような顔になったオッサンなのでした。
後は2回ほど硬いアタリで合わせたら、一瞬でハリのチモト部からプッツリとハリスが切れていました。
これはデカいサメだったのかもね。
ちょっと気になったのが、オッサンの後ろの人物。
かなりの腕前ではあるが、デカい声で自分のシロギス釣りのライブ中継をしている。
「こんなピンギスいらねぇよ〜」
「数釣りに走っちゃってるよ〜」
「あ〜今のは良いアタリだったのにぃ〜」
「すっぽ抜けたぁ〜」
などなど、常連で周りはお友達が多いからはしゃぐ気持ちも分からないではないが、何時間も聞かせられるとあまり良いものでもない。
ただ、その実況中継を聞きながら思った。
”数釣る人も掛け損ねやすっぽ抜けが多いんだな〜”っということはアタらせる絶対量が多いのだろう。
誘い方・落とし込むポイント・船の流しの方向など今の状況すべての要素が絡んでくるんだろうけど、オッサンはまだまだ分かっちゃいないなぁ〜
釣りって奥が深いもんだ。
何のドラマもなくそのまま13時30分で競技終了。
本牧の集合場所へ移動し、10匹の重量を測って順位を決めそのまま表彰式が催される。
本牧の集合場所兼表彰式会場へ移動
入れ替えをしながら掻き集めたトホホな10匹
表彰式会場には、なぜかマイケルジャクソンの曲だけが流れていた
もちろんオッサンはただの見物人となっていた表彰式でした。
10匹重量:643g 総尾数:23匹
箸にも棒にもかからない結果となりましたとさ・・・
でもいろいろと学ぶところも多く、今後に活かせるシロギス釣行でございました。
たまにはこんな雰囲気での釣りもいいやね!
ちなみに根岸丸の結果はイマイチで、上位にも食い込めませんでした。
理由は明白で、釣り場の範囲が中之瀬のみだったから。
同じ優勝者が続くと、その優勝者に不利になるレギュレーションが施行されるのはどの世界も一緒で、根岸丸は地元根岸湾や富岡周辺をピンポイントに攻めて結果を出し続けているが、中之瀬限定となるとさすがに厳しいですな〜
表彰式の若坊主船長の悔しそうな顔が印象的でした。
頑張れ!船長!!
負けるな!船長!!
こういうのが地味にうれしかったりする。