何でよ!?その2 イカ仕掛け巻きを自作するハメに…

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イカ釣りのイカ仕掛け巻きを自作するハメに!

今回の獲物はコレ!



相変わらず世界は例のウィルス騒動でざわついている。


メディアでも、どこぞで初感染確認だの、何人感染しただの連日垂れ流してくるもんだから、こちとらはそんな情報には無痛になってて、もう何とも思わなくなってきた。



こんな状況でも収入が空前絶後の好景気な人もいるんだろうけど、ほとんどの方はジリ貧どころか、コレが続けば生活ヤバいよね?と先の見えない漫然とした不安だけが増幅する。


なにせ、世界中の経済が回ってないんだから、光明なんて見えるはずもない。


先の見えないこの難局を乗り切るエールで『明けない夜はない』と人は言う。


この難局を夜に例えるように、”夜”というワードは何かとマイナスイメージが漂う。


しかし、夜があるからこそ朝を眩しく感じるし、夜にしか見えない景色だってある。


ひとりぼっちで虫の音を聞きながら、センチな気分に浸る秋の夜長のように、いつもの見慣れた風景もやけにしんみり来るのも夜だからこそ。


こんな状況こんな長い”夜”だからこそ、必要以上に他人の気持ちを汲み取ることもきっと出来るんだと思う。


やっと見つけた貴重な箱マスクを、もっと困ってる人のためにそっと棚に戻す…


こんな状況でも働いてくれてる店員さんから、笑顔とお礼でお釣りを受け取る…


お一人3点限定の売出しヤマザキバナナスペシャルを2つだけカゴに入れる…



いつになるのか分からないが、この騒ぎも終息してしまえば現在のセンチメンタルな気分なんて忘れてしまうかもしれない。


人間は都合の悪いことは忘れる動物だから…


この世界的な禍災は長く記録に残るだろうが、今自分たちが感じてるウェットな気持ちはきっと忘れてしまうだろう。


でもこの出来事は、きっと世界と世界の人々のチャンネルをまたひとつ変えるんだと思う。




オッサンの勤める零細企業は、テレワークや交代勤務はもとより、時短営業さえ微塵もなく、いつもと変わらない通常営業。


やっと発令された緊急事態宣言なんぞクソ喰らえなブラック企業。


こんな状況で通常出勤ということは、人の弱みにつけ込んで忙しいのかと思えばそんなことは全く無く、いつも以上に大した仕事なんてない。


だもんで、半分ふて腐れながら余計にやる気もなく、会社で何もせずにただモサ〜っと無為に過ごしていた時だった。



オッサンのガラケーが鳴る。


画面表示を見ると、沖釣り専の友人オッサン2号だった。


こういう時ってロクな用事じゃないのは分かりきってるので、電話に出ないで放置していた。


しかし2号は、こちらのそんな様子をどこかで監視しているかのようにしつこく鳴らしてくる。


あまりにもしつこいので、しょうがなく出てしまった。


「ちょっとお願いがあるんだけど…」


時候の挨拶なんて微塵も無く、出しぬけのお願いである。


”やっぱり…”


16tの酸素が音をたててオッサンの肺に飛び込んだ。


「4ミリくらいのステンレス棒って切れるよね?あと、木材も30cmくらいに切って、それに穴を空けるんだけど、手持ちのドリルだと真っ直ぐに穴を開けるのは大変かな?材料のカットも…etc、etc」


訳の分からん説明を始める2号。


”こいつぁ、何を言ってるんだ?…”


「…っで、何?」と2号をひとまず落ち着かせるオッサン。



落ち着いて話を聞いてみると、どうやら2号の目的はイカ釣りで使うブランコ式のプラヅノ仕掛けを巻きつけるアイテムを自作する気でいるらしい。


材料はステンレス棒と木材だけだが、木材は自分が持ってる工具でも加工できるが、ステンレス棒の加工は出来ないのでオッサンに白羽の矢をブチ込んできたらしい。


”一応”作業の全容を聞くと至極シンプルだった。


でも、2号が作るよりオッサンが作った方が間違いないだろう。


もう話を聞くのも面倒くさいし、何よりもヒマだったので仏心でオッサンが全てを引き受けることにした。


当然、こういう時に恩を売っておけば何かの恩返しもあるだろうて…と下心メガ盛りなのは言うまでもない。



っという訳で、いつものようにやったことのない釣りモノのアイテムを作るハメになった。



まぁ、イカ釣りをする方なら今回のアイテムはご存知のはず。


今回のミッションは、イカ釣りのブランコ仕掛けを巻く『掛け枠』の製作でござ〜る。

材料のチェックと下準備

この流れを見据えてたように、2号がUber Eatsも真っ青の早さで材料を持ってきた。


一応クライアントの要求を聞くが、ひとつだけ面倒くさい事を言ってきやがった。


ソレにお応えするには少々の手間が必要だけど、ソレ以外は至ってシンプルな作業。

2号持ってきた材料はコレだけ



木材は2×材(ツーバイざい)の1×2(19mm×38mm)でSFPのどれかだろう。


まぁ、ホームセンターで安く売ってるやつだね。

どのホームセンターでも置いてるやつね


ステンレス棒は直径4mmの丸棒。

けっこうしっかりめで作りたいらしい


あとは2号が使っているイカ仕掛けも置いていった。


この仕掛けを巻きつけるアイテムを作るのが今回のミッション。


イカって鳥並みの知能を持ってるらしく、人類の次はイカが地球上の支配者とも言われたり言われなかったりする。


しかし、こんなモノにまとわりつく程度では支配者の座もまだまだ遠いな…

こんなのにまとわりついてくるイカって…


クライアントの2号の面倒な要求とは、一枚の木材の幅以内に全てを収めたいということ。


つまり幅19mm以内にイカヅノはおろか、ソレを引っ掛ける部分も収めるということ。


ということは…

↑けっこうお気に入り!


ひとつだけ毛色の違うやつがいる!


このファット君なツノは「スッテ」って奴かな。


他のプラヅノよりも全然幅が広いぞ!


作業進行を見ていくとお分かりいただけると思いますが、このアイテムは平行に並んだ2本のステンレス棒の間にイカヅノを引っ掛ける仕様。


つまり、ステン棒の直径4mm×2本+ファット君が収まる隙間<<<19mmということ。


しかも木材相手なので、あまり端っこに穴を開けると簡単にヒビ割れるし、何よりも耐久性が悪いので穴あけもギリギリ端っこという訳にもいかん。


お手本で参考にした市販の掛け枠も、イカヅノを掛ける部分は同じような木材をダブルに重ねて厚みをもたせていた。


しか〜し、2号の要求はダブル不可!というミッション・インポッシブル。


2号:「ごきげんよう、ハント。さて、今回の指令だが19mmの厚さに全てを収めるのが君のミッションだ!


君あるいは君の仲間が捕まり殺されても、当局は一切感知しないものとする。


死して屍拾う者なし!


なお、このメッセージは5秒後に自動的に消滅する。」


イーサン・ハント(オッサン)は10秒ほど長考し、親指を立ててナイスなお返事。「エベレストに旗を立てるぞ!」
↑まぁ、分かる人にゃ〜分かるね!


というやり取りは全く無かったが、2号からこの説明をされてる時には既にある案が浮かんでいたのでした。




では早速ミッション開始だ!


まずは少々下準備が必要になったので、その製作から。


幅19mm×厚さ4.5mmの平鋼を会社から失敬し、50cmで2本カット。


4.5mmとしっかりした厚み


それにドリルで直径6.8mmの穴を開けます。


写真には無いけど、穴は2つずつね


次にハンドタップでM8mmのネジ山を立てます。

ハンドタップ


垂直にネジを立てるのって意外に難しい


タップ完了!


お次は8mmのボルトを入れていきます。

まずはこんな感じ


後はそれぞれに


コレで完成!


コレは一体何でしょう?


ってもったいぶる程のもんでもないですが、コレは製作時間15分のなんちゃってベンダーです。


ベンダーとは曲げる為の治具で、今回はステンレス棒を力づくで曲げる為に作りました。

いよいよイカ仕掛け『掛け枠』の自作開始

お待たせしました。やっと本題の掛け枠製作開始です。


完成の寸法は写真の通りで、ステンレス棒は木材内へ30mm埋め込んでます。

全長は30cmです



順番はど〜でもいいけど、一番面倒いイカヅノを掛けるステンレス部分から開始。


120mm×3本、125mm×1本が掛け枠ひとつ分の本数です。

油性マジックで印をしてカット


今回は丸棒のカットはディスクグラインダーです。


鋼材をカットする専用機のメタルソーもあるのですが、ステンレスをカットするとすぐに刃がダメになるので簡易なグラインダーでカットします。

ステンレスって結構手強いんだよね


カット面にはバリが出るので


グラインダーで面取りします。本当は切刃でやっちゃダメなんだけどサ


こんな感じに面取り


次に125mmのステン棒を曲げます。


先程のなんちゃってベンダーにステン棒をセット!

セット位置はこんな感じ


あとは力づくじゃ!ステンの4mmともなると硬い


直角になるように微調整


直角に出来たらベンダーから外します


次に余計な部分をカットするのですが、カット寸法は使用するイカヅノによって違うと思われます。


今回はステン棒の内側から6mmでカットしました。


つまりイカヅノの引っ掛け部の全幅は、ステン棒4mm×2本+隙間6mm=14mmとなります。

6mmでカット


ステン棒は全て木材に30mm埋め込むので、長さを揃えます。

曲げた先(写真では左側)が埋め込み部


さて、いよいよこの作業のキモの溶接です。


いつもは軟鋼を溶接している半自動溶接機ですが、今回はステンレス用のワイヤーにチェンジしています。


本来ならTIG溶接機があればキレイに仕上がるのですが、そんなオシャレな機械はないので…


4mm丸棒という細い材料なので、溶接作業は一瞬の勝負になります。

けっこう緊張


一瞬勝負終了。ちょっとやり過ぎた…


この機械でのステン溶接は黒くなるので


軽く磨いて黒ずみを落とす


もうここまでご覧いただければお分かりですね!


そうです!
変形Uの字にして穴を一か所で済むようにした
のが今回のミッションだったのです。


最後に、接着剤が密着しやすいように埋め込む部分にヤスリで傷を付けます。

ガリガリとね。この作業は気持ちの問題かな



お次は木材のカット。


この程度ならノコギリでも十分だけど、一応機械があるので楽をします。


使うのはスライド丸のこなんだけど、会社にあるのはかなり古いタイプで鬼のようにデカくて重い。


最新式のは小さく軽量で、レザーマーカーが付いてたり充電式だったり。

鬼の重量&デカイ!でもよく切れるよ!!


木材は30cmにカットします。

30cmにカット


カット面も美しい


当然、角は面取りします

細かい気配りは大事!



次に所定の位置に穴開けですが、幹糸を巻きつけるステン棒はセンターですが、もうお分かりのようにイカヅノ棒はズラさなくてはなりません。

今回はセンターから3mmズラしました


穴を開ける機械は卓上ボール盤。


まぁ、手持ちのドリルでも穴は開くけど、30mmの深さを垂直に開けるのって結構テクニックいると思うよ!


特に今回は穴位置が微妙だし…


何でこの機械を「ボール盤」と呼ぶのか?どこにもボールなんて見当たらないんだけど…


と思って調べてみたら、オランダ語のボーアバンクboor bank(ドリル台)に由来していて、なんでオランダと思ったら江戸末期に工作機械がオランダから輸入されてたためらしい。


bank=「盤」はただの当て字らしい。ガッテン!ガッテン!

背景が汚くて申し訳ないっす!


さすがに穴専用機械だ。


垂直穴は当然ながら、穴の深さもミリ単位で調整できる。


キツくてもゆるゆるでも困るので、キリは直径4.2mmを選択。

やはり専用機はいいね!


穴開け完了!


今回2度目のご出演


穴位置が微妙にズレてる事を…

こっちがイカヅノ棒穴


こっちは幹糸棒穴


とりあえずこんな感じに仕上る


いよいよ最後の作業、棒と木材の接着です。


使う接着剤は信頼の2液性エポキシ系接着剤。

強度、異種材料の接着もOKと申し分なし


2液出して練り練りとね!

硬化時間が30分〜だから、気持ちに余裕を持って作業出来る


塗布量はこんなもんかな…


接着剤が全面に付くように、適当に出し入れしながらズブズブ〜っと入れる。

ちょうどいいくらいの溢れ加減


溢れた分は楊枝で取り除く


丸一日乾燥させたら完成!!

完成じゃ!お疲れさまでした


市販の掛け枠は、幹糸を掛けるステン棒は60mmくらいで短かった。


クライアントの2号に確認したら「ツノ部と同じ長さで!」という事だったので、同じ長さで製作しました。




ちなみに今回の納品分。

いつもながらひとつだけ作ることなんてなくて、材料があるだけ作った


さて、一番手前の白いのは何でしょう?


コレはプラスチック樹脂で、木材と同じようにノコで切ったり出来る素材です。


木材ベースだと、海水だったり、手に付いたイカのヌメリだったり、イカ墨だったりが染み込んで、乾かしたり汚れが落ちなかったりでいろいろな問題があると思われる。


そこで簡単にお手入れできる素材なら良いのジャマイカ!?とおひとつ作ってみました。




試しに2号の仕掛けを巻いてみた。


ちゃんと綾掛けでやってみましたが、キレイに巻けるもんだ。


ただ、やはり幹糸を掛けるステン棒はもっと短い方が巻きやすいと思う。


まぁ、オッサンがやる訳じゃないからど〜でもいいが…


キレイに巻けるがステン棒は短い方が良いと思うよ



市販の掛け枠には、巻き始めは輪ゴムを引っ掛けるヒートンが付いてたけど、それは2号がセルフサービスなんとかするんだろうから、とりあえずでテープで貼った。


というわけで、オッサン・イーサン・ハント
「ミッション、無事完了!」



恐ろしいのは、よくよく考えてみると2号が依頼してきた釣りものアイテムで、オッサンが実釣していない釣りものって無いんだよね。


っということは、オッサンのイカ釣りデビューも近いのかな…


まぁ、それは考えないようにしよう。



今回の掛け枠で2号のイカ釣りレベルがどれくらいジャンプアップするのか知らんが、イカが釣れたらおすそ分けもくれるだろうて…


ぽっぽ焼き、煮物、バター炒め、マリネ…イカレシピって多いから楽しみだな〜って思ってたんだけど、材料を受け取った時の2号のセリフを思い出した。


「イカ釣りって釣れる日にあたったこと無いんだよね。いつも渋い日ばかりで…」


イカは自分で買ってくる方が早いと思った。




後日、2号がパッケージングの写真を送ってきた。


仕掛け巻きをまずクリアファイルに入れ、更にジプロックで密封しているらしい。

ずいぶん厳重保管だな…



今回の2号の仕掛けは7本ヅノだったけど、イカ釣り上級者は15本とか20本ツノでやるらしい。


さすがにその数ともなると特別な仕掛け巻きが必要かな?と思ったけど、ちょっと考えてみたら別に難しくないな。


今回仕様のツノ部を手前と奥にダブルに配置して、手前と奥で交互にイカヅノ掛けていけば出来るんぢゃね?


まぁ、市販品みたいにツノ部の木材は二重になるけどね。


機会があったら試作してみようかな。


イカ釣りやらないけどサ!

追加発注あり!

納品した翌週に2号から掛け枠の追加発注が来た。


前回納品したブランコ式仕掛け用の掛け枠×6個、直結式仕掛けの掛け枠×6個という内容。

ズラリ!今回の納品分


直結式の掛け枠の場合は、ツノをステン棒に掛けないから単純に3本のステン棒を並べるだけで良いらしく、簡単だった。

こちらが直結式仕掛け用。どうやって巻きつけるのか知らんが…


受注時に「この前仕掛け巻き作ったばかりなんだから、もういらんだろ!?」と2号に言ったら、「ヤリイカ、スルメイカとか釣りモノによっても仕掛けが違うから、いろいろ必要なんだよね…」と2号。


つくづくイカ釣りに手を出してはいけないと心に誓うオッサンなのでした。

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