祝!開通 中通し手バネ竿が詰まったらしい

中通しの手バネ竿が詰まったもんで直してみた

 

釣り人の悪い性癖のひとつに、釣りを続けているうちにいろんなアイテムが無限に増えてゆくという現象がある。

 

昨今の釣り仕掛けは、いろんな小道具を装着してド派手になってゆく傾向だ。

 

釣り番組や釣り雑誌では新商品が目白押しで、有名釣り師や釣りガールがそれを使って釣れましたアピールするもんだから、魚を釣る前に釣り人の方が釣られてしまう。

 

そんな訳で、フツーの釣り人もいつの間にやらガチャガチャとアイテムだけが増えてゆく。

 

カラフルなラインやらオモリ、いろんなコーティングが施された釣り針、各種の天秤やらエギやらテンヤやら、その他訳の分からん小物の群れ…

 

良く言えば向上心と創意工夫の産物だが、そのほとんどはもう二度と日の目を見ないアイテム達。

 

たまたまそのアイテムを使って釣れればレギュラー入りだが、たまたま釣れなければサヨナラだ。

 

しかしレギュラーアイテムさえも、新商品登場!によりアッという間にポイされる訳で…

 

ある意味、読売ジャイアンツの選手よりも非情な扱いを受けるのが釣りアイテム。

 

 

使わないなら処分すればいいもんを、”きっと使うこともあるだろうて…”と貧乏性の如く、一応とっておくのが釣り人の悪い癖。

 

なにかの拍子に「そう言えばアレがあったな…」と何年かぶりにそのアイテムが役に立ち、「あ〜、取っておいた良かった」と安堵する。

 

こんなノリなもんだから、釣具は増殖する一方。

 

釣具専用の収納場所は雑多になり、いつしかオーバーフロー。

 

家族に内緒で第二の収納場所を確保したのもつかの間、発覚してしまい廃棄命令が下る。

 

それでもめげずに、最初の専用場所にテトリスのように隙間を無くしてギュウギュウに詰め込む事に成功!

 

ホッとひと安心する始末。

 

 

小物類ならまだ何とかなるが、釣り人を悩ますのが竿(ロッド)類だ。

 

クーラーボックスという意見もあるかも知れんが、いくら釣り人でもかさばるのが分かっているからいつの間にか増えるという事はなくて、ある程度の自制は効くハズだ。

 

しかし竿は始末が悪い。

 

多くの釣り人が同意してくれると思うが、ひとつの釣りもので竿一本しかありませんはあり得ない。

 

忘れた頃に行く程度の釣りものならいざ知らず、シーズンに複数回行くようならもう手に負えない。

 

釣りレベルが上がるにつれて、いろんな竿が増え始める。

 

長さ、調子や硬さ、素材等、それぞれに違うタイプの竿がみるみるうちに増えてゆく。

 

どこぞの名人が使っていると聞けば、同じ竿を使ってみたくなるのも人情だ。

 

自分の手となる究極の一振りに出会うのが釣り人の永遠のテーマ。

 

たぶんそんな竿なんてないんだろうけど、それでもロマンを求めて竿が増殖してゆく。

 

興味も関係もない他人に言わせれば、「どの竿も同じぢゃね?」なんだけど、当人にとっては、その一振り一振りが魚とのひと時を過ごしてきた大切なメモリー。

 

たとえ折れても使えなくても捨てられない、ラブ・イズ・ブラインド。

 

 

そんな訳で竿というアイテムはとても始末が悪い。

 

「竿なんて細いから隙間に立てておけばいいじゃん!」と簡単に思われるかも知れませんが、安竿ならともかく、ひと竿ツェーマン以上もするような竿ともなると、むき出しにしておくなんて愚の骨頂。

 

繊細な竿が何かの拍子で変形したり、最悪は折れたりする事態もあり得る。

 

だもんで、購入した時のケースに入れて仕舞い込むもんだから余計にかさばる事態。

 

そんな箱入り娘(竿)達がみるみる増えて収納場所を圧迫してゆく…

 

人によっては自家用車にロッドホルダーを装備して保管してたり、部屋にシャレオツなロッドスタンドを置いて竿をディスプレイしてあったりする。

 

しかし、独身貴族やセレブならいざ知らず、家庭持ちの一般ピープルごときがそんなゼータクは出来ないだろう。

 

ましてや、オッサンみたいに社会の底辺でうごめいている程度では、家のひとつの収納内の更にはそこのホンの端っこをあてがわれ、その範囲内で釣り活動をするのが現実だ。

何も考えずに軽請け合い

ハゼ釣り仲間のM氏もそんな釣り師のひとり。

 

いや…、別に社会の底辺とかの話じゃなくて、釣り道具が増えてゆくという方向で…

 

M氏の場合は竿。

 

ど〜言う訳かこの御方、ハゼ釣り竿がみるみる増殖して、釣り上げたハゼよりも竿の方が多いんじゃないの?というくらいの増えっぷり。

 

まぁそれは大げさだけど、酷い時はM氏のブログがアップされる度に竿を買ってたりする。

 

ちなみにM氏のブログはこちら→「ハゼ釣りはじめました。」

 

そんなM氏に一味のI氏は警告する。「同じハゼ竿で1,000匹釣らないとその竿の本質は分からない」もっともな戒めである。

 

しかしM氏はそんな金言をモノともせず、ハゼ竿コレクションはヒートアップ!

 

何でM氏はそんなに竿を買い求めるのか?

 

ちょっと不思議に思ったので少々浅慮してみた。

 

M氏は物腰がとても柔らかく、見た目も朗らかなんだけど、そんな現在では想像もつかないほど若ぇ頃はスポーツというか格闘技をかなり本気でやっていて、ストイックな生活だったらしい。

 

今現在も仕事で未開の地へ送り込まれたりとかなりハードらしい。

 

思うに、そんなファンキーな人生なので、その反動で釣りそのものよりも欲しい竿を手に入れる事によって心の平安を保っているのかも知れない。

 

M氏の心中察するに余りあるが、M氏にしてみれば「オマエなんぞに言われたかねぇよ!勝手に決めつけんな!!」だろうて。

 

まぁオッサンにしてみれば羨ましい限りの財力なので、単にオッサンが嫉妬しているだけなんだけども。

 

 

そんな竿マニアのM氏がまたしても竿をゲット。

 

今度のは竹製の和竿風中通し手バネ竿。

 

何でそんなのに手を出すかな?

 

マニア道は複雑多岐に渡るので、オッサンには既に理解し難いレベルにまで達しているようである。

 

今回はメルカリで中古品を安く手に入れたらしいが、和竿って奴は癖がある。

 

和竿は釣り道具としてだけではなく、工芸品みたいな側面もあるから、使ったら必ず念入りに手入れをしなくてはならない。

 

水洗い→乾拭き→乾燥くらいなら良いが、油塗ったり、曲がりを矯正したりなんぞ考えるだけでねぶたくなる。

 

このブログの読者ならご存知の通り、オッサンは面倒くさがりなので、んなもんやったらんね〜

 

和竿への憧れみたいなものはあるんだけど、所有した後を考えるとどうにも二の足を踏んでしまう。

 

そもそも高価だから全く手が届かないのが一番の理由だけどサ!

 

 

 

M氏が手に入れた怪しげな和竿。

 

中古なのでまずは一味のI氏が預かり、油を塗ったりやらのお手入れをすることになったらしい。

 

I氏は釣りの上級者なので経験値が高く、和竿も扱い可能なようだ。

 

んでI氏が竿を確認したところ、ある事実が判明!

 

届いた時は道糸が中通し竿の中に入ったままだったので、一度抜いてお手入れ後に再び道糸を通そうとしたら、どうにも通らなかったらしい。

 

竿先の方で竿の中が詰まっている箇所があるとのこと。

 

中通し竿(インナーロッド)を使っている内に、道糸に付いたゴミやら海水の塩分やらで詰まりが発生する、というのはよくある症状。

 

I氏もいろいろやってみたらしいが、どうにも開通しないとのこと。

 

I氏曰く、「この詰まりを無理やり開通させようとして、竿を2本ダメにした事がある」らしい。

 

竿をぶっ壊した前科と他人様の竿という事実が、修理作業を消極的にさせるようである。

 

この話を聞いた時「ん?そんなの簡単に直るんぢゃね?」と思った。

 

もちろんオッサンは和竿なんて所有したこともなかったし、和竿の知識なんてミジンコ程度なものである。

 

しかし、オッサンは軽請け合いし大切な和竿を預かったのでした。

 

無知とは恐ろしいものである。

預かった和竿。和風な竿袋も付いて格安だったらしい

 

竹製で竿銘は無く、江戸和竿というほどでもない。

「テプラ」で作った風なシールが貼ってあるだけ…

 

馴染みの釣具屋の親父曰く、「竿銘が入ると入らないでは値段が一桁違う」らしい。

 

どんな商品にもブランドがあって、そうでないモノとは区別される。

 

ブランド化されれば差別化や顧客ロイヤルティがジャンプアップ!

 

それゆえ、価格競争も回避できて高利益率を維持できるというメリットがある。

 

買う側も、とりあえずブランドものなら間違いないだろう…という安心感は手に入る。

 

 

親父は続ける。「だけど、銘が無くても良い竿はたくさんある!」とのこと。

 

確かに。

 

誰にも知られてなくとも、高品質ロープライスな商品は多数ある。

 

数々のバッタモンで痛い目にあい、それでもめげずにやっと手にした掘り出し物を発掘した時の喜びは人一倍だ。

 

ちなみに「人一倍」ってただ一倍なんだから人並みぢゃね?と思われますが、明治の初期頃までは「一倍」が×2の意味だったらしい。

 

だもんで人一倍=2倍という意味で現在も使われているらしい。

 

ガッテン!ガッテン!

 

今現在のブランドの数々も、世に出た当初は誰にも認知されない厳しい下積み時代を乗り越え、現在の地位を築いているのである。

 

M氏の竿がブランドの地位を確保するのかは知らんが、あのシールを見る限りでは難しいだろうて…

 

大したことのない竿だったのと、預かった時にM氏より「通らなかったら諦めますので、軽い気持ちで試してみてください」という心強いお言葉も頂いた。

 

了解しました!

 

軽い気持ちで破壊活動を開始します!

 

祝!開通したぞい!

んでやっと本題に入ります。

 

I氏情報によると、竿先から二番目の竹節で詰まっているらしい。

竿先あたりが問題の詰まり箇所らしい

 

まずは現状把握から。

 

使うのは、オッサンが中通し手バネ竿を買ったときに竿に付属していたアイテム。

 

竿中に道糸を通す時に使うワイヤー。

「竿中とおる君」って…

 

まぁ、ある意味記憶しやすいネーミングなので覚えやすいと言えばそうなんだけど、微妙なセンスではある。

 

そんな”とおる君”を竿先から突っ込んで問題の箇所を確認する。

竿先からとおる君を挿入

 

確かに、とおる君が止まる箇所は竿先から二番目の竹節の部分だ。

I氏の言う通り、二番目の節で止まる

 

ただ竹は自然物なので完全な直線ではない。

 

竿の製作者が一生懸命直線に補正するんだけど、節部分はどうにもならん。

 

なので、内側の節の抜きが完全ではないのかな?という危惧がないわけでもない。

 

なにせ竿銘すらもない怪しいバッタモンなので、疑心暗鬼になるオッサンを誰も責めることは出来ないだろう。

そもそも節部が怪しいと思うんだけど…

 

特に竿先から最初の節部は歪みが大きかったんだけど、とおる君はそこをたやすく通過した。

 

やっぱり二番目の節部で詰まっているのは間違いなさそうだ。

最初の節部は歪みが大きいが…

 

という訳で、詰まっている竿先から二番目の節に目標を定める。

 

一応、とおる君で竿を回転させながらツンツンやってみたんだけど、敵も強固でビクともしなかった。

 

やはり、こんな細くて軟らかいワイヤーごときじゃ歯が立たたんらしい。

 

 

なので当初の予定通り、ドリル作戦を決行する。

 

まぁ言葉の通り、ドリルの如くグリグリと掘り進める作戦である。

 

問題は、目標箇所は竿先から20cmくらいの距離なので、通常のドリルキリでそんな長いシロモノはない。

 

とうことは、ドリルのキリを何かで代用しなければならない。

 

最初に思いついたのは、釣具屋で売ってる天秤とかを自作するステンレス線と思ってたんだけど、ちょっと立ち止まる。

 

たぶん、一番目の節の歪みが邪魔をして、真っ直ぐなステンレス線では目標箇所に達しないかも知れない。

 

無理に突っ込んでグリグリやると、最悪、歪み部のどこかから竿を突き抜けて穴が開くかも知れない。

 

I氏がやらかした失敗がコレだったらしい。

 

 

キリの代用は、細くて(直径1mm以下)柔軟性はあるけどフニャフニャでは話にならないので、ある程度の張りがある針金素材。

 

何か良いものはないかな?

 

いつものように会社内を物色する。

 

するとナイスなブツを発見!

 

それは半自動溶接で使う溶接ワイヤー。

 

溶接時はこのワイヤーがニョロニョロと出てきて、バチバチとこのワイヤーが溶けて溶接できるようになる。

 

まぁ普通は半自動溶接機なんてご家庭に無いからイメージできない方も多数おられるだろう。

 

要するに、ピアノ線とステンレス線のあいの子みたいな感じの張りのある針金。

 

太さは0.8mmでちょうど良さそうだ。

 

このワイヤーを25cmくらいにペンチで斜めにカット。

 

コレをドリルにセットして準備完了。

今回はインパクトドライバーのドリルチャックに装着

 

ドリルがない場合は手動でやることになるが、手動って微妙な力加減が出来ると思いガチですがさにあらず。

 

手動でグリグリやると意外に力加減が難しいし、力の方向が一点ではなく、いろんな方向に向かうので狙いが定まらない。

 

その結果、竿が折れたり、I氏のようにとんでもない方向から穴が開くという事態になる可能性もある。

 

 

では早速ワイヤードリルを挿入するが、やはり最初の歪んでる節でストップ!

 

ゆっくりとドリルを回転させると通過したので、更に前進。

 

問題の二番節に到着し、ワイヤーがストップする。

 

さぁ、ここからが勝負!

ここから掘り進める

 

抵抗を感じつつゆっくり回転させると少しづつ進んでゆく。

 

作業しながら”最悪、竿に穴を開けて竿を壊したらM氏にどんな言い訳をしよう…”

 

”もしかしたら逆上して昔の血が騒ぎ、『チョムチョム』くらって殺されるかも知れないな…”とロクなイメージしか思い浮かばない。

 

しかし「この抵抗は竹に穴を開けてる強さではなく、それほど硬いものではない何かを掘り進む感じ…」

 

何が詰まってるんだろう?

 

未確認物体の中をグリグリと掘り進むと、ついに抵抗が無くなった。

 

お!ついに開通か!?

抵抗が無くなりキリが根本まで入る

 

突破したらしいので、ドリルを抜いて手動でワイヤーを突っ込むと開通しているのを確認。

 

今度はワイヤーを所々曲げてもう一度挿入し、前後にグリグリやって開通穴を広げる。

手動でグリグリとね

 

この時点では詰まっているものが何なのかは謎。

 

 

お次は竿内の掃除。

 

使うのはスプレー式のエアダスター。

どんなご家庭にもコレ一本!

 

ノズルを竿先に当てて、プッシュすると反対側から粉状のものが吹き出した。

ノズルを当ててワンプッシュ!

 

ん?何コレ?

 

何か固形物が出てくるのを期待してたんだけど、出てきたのは竹の削りカスみたいな感じの粉状のものだった。

 

実はドリル作戦の前にエアダスターをプッシュしてみたんだけど、全然刃が立たなかった。

 

エアダスターの威力って結構あるから、ガッチリ何かが詰まってたハズだけど、出てきたのは粉状の物体のみ。

 

結局詰まりの原因は分からず、釈然としない開通作業でした。

 

 

念の為、道糸をそのまま突っ込んでみた。

オッサンの手バネ竿を買った時におまけにもらった道糸

 

んがしかし、道糸は貫通しなかった。

 

ストップした箇所は、今回問題の箇所ではなく竿先の一番目の歪んだ節だった。

最後の最後でストップ

 

なので、再び竿中とおる君の助けを借りて、竿に付属していた道糸を通した。

とおる君を使えば道糸はバッチリさ!

 

いい仕事するぜ!とおる君

 

という訳で、M氏の中通し手バネ竿は使えるようになったと思う。

コレでハゼが釣れるかどうかはM氏の腕次第だが

 

無事に使えるようになったM氏の和竿。

 

何が詰まっていたのか?

 

その原因は謎のままだが、また詰まったら今回のように殺(ヤ)ればなんとかなると思う。

 

しかし、その前にM氏の悪い虫が騒ぎ出し、この和竿は使わずじまいで次の竿に触手を伸ばすかも知れない。

 

今回のI氏とオッサンの労力が徒労に終わる可能性が高いのがまた怖い。

 

たぶん一回くらいはこの竿を使ってみるだろうが、二回以降があるのかは極めて怪しい。

 

これまでもそうだった…

 

竿を新調してお披露目したと思ったら、「またやっちゃいました♪」と次は違う竿でハゼを釣ってたりする。

 

マニアと呼ばれる方に一番感銘を受けるのが、独自の価値観とセンス。

 

釣り仲間の中で独特の存在感を醸し出すM氏。

 

その感性を大切に持ち続けて欲しい!と切に願うオッサンなのでした。

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